長年走ること習慣になっていますが、得られることはたくさんあります。前回も書いたように、特に食事制限はしていませんが体重は維持できていますし、基礎代謝が高いのか冬でもあまり寒くなく薄着でいられます。ちょっとした移動なら歩くか走るかしているので、道や街に詳しくなります。PASMOの出番は減らせるし、おそらく帰宅難民になることはないでしょう。
ランニングスタイルは独学・自己流ですが、色々と勉強するうちに関節の可動性や姿勢の重要性なども理解できてきました。それらは人間の体や病気というものへの理解にも通じ、結果的に診療のスタイルにもつながりました。
肩こりのひどい人やその延長線上にある筋緊張性頭痛の方には、姿勢や背骨の歪み、肩甲骨や肩、首の位置のずれなどを指摘しながら、簡単な姿勢矯正を指導させていただくことがよくあります。その際に実感して頂きたいのは、ちゃんとした姿勢で座るのは意外に楽ではないということです。
意識せずに座ると体重をお尻・尾骶骨の辺りで受け止めることになります。実はこれが腰に負担をかけていて腰痛の一因になると思っているのですが、確かに楽です。
正しい座位姿勢では、骨盤はやや前に倒れ、椅子を太ももの裏側で感じてお尻の穴は少し浮く感じになります。肩甲骨を後ろに引き、耳は肩の真上ですので、自然に手は太ももの上に乗り膝には届きません。意識の中心はヘソ下(いわゆる丹田かその少し下)です。この姿勢だと自ずと腹筋・背筋を使わざるを得ず、楽ではありません。楽に座っているときは腹筋も背筋も緩んでいます。だから楽なのです。
正しい姿勢では「肩肘張って」いなくてはいけません。裏を返せば、正しい姿勢で座ることはそれだけで腹筋や背筋を鍛えることになるわけです。基礎代謝が増えてメタボ対策になるかもしれません。
腹筋・背筋は脊柱起立筋で背骨を立てておくために必要な筋肉です。ですから正しく座ったり立って歩いたりしているときには必ず働いています。わざわざ腹筋・背筋のトレーニングをしなくても歩いていれば十分に使われるのです。
私は筋トレを全然していません。いわゆるアスリートなら必要でしょうが、私レベルのランナーなら走っていれば大丈夫です。
人間にはそもそもその程度の能力はあって、狩りなどで毎日長距離移動していた先祖たちは腹筋のトレーニングをしていたとは思えません。今でも狩猟採集生活をしている民族がありますが、彼らは怪我でもしない限り腰痛を自覚することはないそうです。
私はかつて、腰痛は直立二足歩行の代償だと思っていましたが、今は違います。腰痛は「現代生活の代償」であって、二足歩行に責任はないと考えています。
二足歩行に際して背骨を垂直方向に支えるという腹筋・背筋の本来の仕事を減らして弱らせていることが問題なのであり、腰痛症は生活習慣病の一つだと思うのです。
2019.6.24